縫合糸反応性肉芽腫と血管シール装置 [最近の患者さんから]
原因となる糸は以前お話ししたように絹糸であることが多いようで、これを使わなくなってからは発生が減ったと言う説もあります。一方で、数は少ないようですが絹糸以外の糸を使っても同じ病気が起こったと言う報告もあります。ならば、と言うことで最近注目されているのが、血管を切断するときに糸を一切使わないと言う方法です。血管シール装置などと呼ばれていますが、電気メスと同じ理屈で切ろうとする組織に熱を加えて固めてそこを切ると言うものです。7mm程度の血管まで処理できると言うことなので、中型犬以下の動物ならばほとんどの血管を糸で結ぶことなく切断できることになります。
実際に使ってみると、今まで糸で結んだり金属クリップで留めたりしていた血管をいきなり切ることになるのでなんだか不安でしたが、処置後の血管はかなり圧力を加えても出血しません。これなら大丈夫だな、と思いました。また、腫瘍の手術などではたくさんの血管を処理する必要があり、今までは糸で結ぶことにかなりの時間を取られていましたが、これがなくなることで手術時間がかなり短縮されます。これも大きな利点ですね。
と喜んでいたら最新の雑誌に、この「縫合糸反応性肉芽腫」はじつは縫合糸だけではなくいろいろなものに反応して起こるのではないか、と言う説が載っていました。
熱を加えて固めた、いわば変質した組織自体が原因になることもあるのではないか、と言うのです。こうなると、もうどうしようもないなという感じですね。もっとも、最大の原因はやはり絹糸を初めとする縫合糸だろうとも書いてあったので、血管シール装置などを使うメリットがないわけではないようです。と言うわけで、当院では、避妊手術・去勢手術をはじめとして使用可能であればこの装置を使っていこうと思っています。今のところまだ十数例ですが、思わぬ出血などの事故は起こっていません。
下の写真が当院の血管シール装置(サージレックス社エンシールシステム)です。
左端の開いた部分に血管を挟み込み、右端のハサミの持ち手のようなところを握りながら電気を流すと挟んだ血管が熱で固められ、同時に内蔵されたメスの刃で切断されて行きます。数秒で処置は終わります。
CTを撮るには [CT検査]
CTシリーズの最後です(たぶん)。
CTを撮るには具体的にはどうしたらいいのか、ですが、その前にどんなときにCTを撮るのか、を考えておかなくてはいけません。前回お話ししたように、CT検査が不向きな病気もあるし、危険性や費用の問題もありますから。
一番多いのは、やっぱり腫瘍が疑われるときです。腫瘍の位置・形・大きさ、どこから生じたものなのか、周りの組織との関係、他のところに転移していないか、などはCT検査でわかることが多いと思います。
他にも、椎間板ヘルニア、腫瘍以外の肺や内臓の病気、血管の病気などでも力を発揮すると思います。
さて、このような病気が疑われて、血液検査やレントゲン・超音波などの検査ではまだ情報が不十分だと思われるときに、CTの撮影を考えるわけですが、次のような段取りになります。
まず、前回お話ししたようにCT撮影時には麻酔をしますので、麻酔しても大丈夫な状態かどうか十分にチェックします。
次に、当院からCTセンターに予約を入れます(平日はほぼ毎日撮影が可能なので、何日も待たされることはありません)。撮影は昼の1時頃か夜の8時〜9時頃になります。
撮影当日、予約時間までにCTセンターに行くわけですが、これは飼い主さんが連れて行っていただいても結構ですし、うちに預けていただいて私が連れて行ってもかまいません。どちらの場合でも、CTセンターでの麻酔や撮影などの操作は私が行います。
なお、撮影前は原則として最低12時間の絶食が必要です。この間、水以外のものを与えないようにしてください。
飼い主さんに連れて行っていただいた場合は、撮影が終わり麻酔が覚めた段階でお返しします。待ち時間は多くの場合1〜2時間程度です。撮影に立ち会っていただくことはできません。
うちに預けていただいた場合は、私が連れて帰り、当院でお返しします。撮影が昼の場合は当日の夕方、夜の場合は翌日の朝のお返しになります。
検査結果のご説明は撮影の翌日以降、ご都合のいいときに当院にお出でいただいて行います。専門の放射線科医に意見を求めた場合には少し遅れることがあります。
費用は撮影終了後に当院から請求させていただきます。CTセンターに直接お支払いいただくことはありません。
と、まあ、こんな流れになります。
いろいろと疑問点はあると思いますが、こまかいことは実際に撮影を考えたときに十分にご説明して納得していただくようにしています。
「この子はどうして具合が悪いんだろう?」、「この子の病気をもっと詳しく知りたい」、「手術をした方がいいんだろうか?それとも・・・」そんなときにはCT検査のことを考えてみてください。
CTの困ったところ [CT検査]
さて、とってもすごいCTではありますが、残念ながらいいことずくめ、と言うわけにも行きません。
まず、体中どこでも撮影できるわけではない、と言うこと。不得意なところがあります。
例えば、脳。一部の脳腫瘍や脳の中に水が溜まってしまう水頭症などCTで十分診断できる病気もありますが、出血や梗塞(脳の血管が詰まる)、脳炎などはCTでは診断が難しくMRIなど他の検査に頼らざるを得ません。
次に、動物ではほとんどの場合撮影時に麻酔が必要なこと。
最近のCTは高速化してはいますがそれでも撮影には数十秒はかかります。どんなにいい子でもこの間身動き一つしない、と言うわけには行かないですよね。機械の構造やX線被曝の問題から、普通のレントゲン撮影の時のように人が抑えるということもできません。ですので安全に麻酔がかけられる体調であることが前提条件となります。
他にも、X線被曝の問題(普通のレントゲン撮影よりは浴びるX線の量がかなり多い)、撮影時に使用することが多い造影剤という薬の副作用の問題などがあります。
ちなみに、これまでの1年間でうちの病院の患者さん三十数頭撮影しましたが、事故はもちろん起こっていません。センター全体でも数百頭撮影して事故はゼロだそうです。
平塚からだとCTセンターが少し遠い、と言うのも問題かもしれません。普通は自動車での移動(片道40分程度)になりますが、苦手な子もいますよね。
動物の体には直接関係のないことですが、費用の問題もあります。決して安くはありません。
CT撮影前に必須としている血液検査、麻酔剤や造影剤などの費用、技術料、機械の使用料など全部含めるとうちの病院の場合、動物の大きさにもよりますが4〜6万円ぐらいにはなってしまいます。
高いですか?これでも機械のランニングコストを考えるとぎりぎりなんですが・・・。
このように危険と手間とお金をかけて検査をするからにはそれに見合うだけの結果を出したいと頑張っているつもりではありますが、正直なところ思うとおりに行かないこともあります。まだまだ修行が足りないと反省しております。
さて、CTのいいところも悪いところもわかった。じゃあ、実際にはどういう流れで撮影に至るのか?と言うお話は、次回。






